眠れない夜の為に-チープな 午後3時-

初めての関東暮らし、町歩き、出逢いを記録しておきたい

僕と音楽と出来事と (3)青いスタスィオン(7-2)

こんにちは
【Ren-new】くんです
このお話シリーズは僕の実体験を
砕いて切り刻んでミキサーにかけて
ゼラチンで固めてお届けしています
実話であって寓話です
【Ren-new】くんなんで言ってますが
「くん」とは呼べない(呼びたくない)ほど
長く生きているので、物語も長いものに
なると思います
そして、内容的には受け入れ難い内容のお話しも
出て来ると思いますので、不愉快に思われる
方には先にごめんなさい
読者登録を解除して貰っても全然大丈夫です
ので、お気になさらないで下さい

【Ren-new】くんとは、こんなヤツなのです

ま、まだそこまで話しは進んでいなくて
まずは、前回からの続きです

健全です(笑)


2. スクール・ガール

ある時、教室にいる僕にカナコが近づいて来て
耳打ちをした

「ね、裏の自転車置き場に来て」

囁くような小さな声でそう告げると
カナコは風のように去っていった

「え? なに、どうした?」


来て、と言われても、もう授業は
始まるところで
入れ違いに日本史の教師が
教室に入って来たところだったから、
一瞬戸惑ったけれど
僕は彼女の言葉に従ってそっと教室を抜けた

「レン?どこ行くんだ」

悪友が声をかけて来る
とりあえず睨みつけておいて、

「トイレ」

のポーズをしながら駐輪場へ走った


駐輪場に着くとカナコの姿は無い
おかしいな、とキョロキョロしていると
裏門を抜けたところに彼女はいた

「なにしてんだよ」

「ね、サンドイッチ好き?」

「好きだけど、なに!授業始まっちゃったよ」

なに言ってんだ?


「美味しいサンドイッチ好き?」

僕は落ち着かなかったが、カナコは
なにかを企んでいる表情をしている
ふーん、面白い事思いついたんだな

「だから、どうしたいんだ?」

「行こうよ、美味しいサンドイッチ食べに」

そう言ってカナコは僕を手招きする
まるで野良猫にするみたいに


こんな時に、拒否するという選択肢は
無かった
楽しそうな出来事には乗っからなきゃ
といつも思ってる
僕はカナコの方に歩き出す

と、

「走って!」

カナコがそう言いながら走り出した
僕も後を追って走る



おおかた駅の方に向かうのかと思って
いたらカナコは反対の方へと走り出し
そして学校のすぐそばにある喫茶店
入っていった



え?そこ?



嫌な予感しかしない

でもカナコはニコニコしている
なんかとても楽しそうだけど
少しいつもより行動が大胆だな



カウンターしか空いていなかったから
僕らは並んでカウンターに座り、いかにも
純喫茶という感じの古びた喫茶店
ミックスジュースとサンドイッチを注文した

BGMにCCBの「スクールガール」が
流れている

「ね、レンくんっさ CCBに似てるとか
言われない?」

「言われない、ってCCBの誰に似てると
思ってるんだよ?」

カナコはニヤッと笑って、

リュウくんかな」

とドラムでメインボーカルの名前を挙げた

「それは髪型のせいじゃない?」

当時、ピンク色にはしなかったけれど
チェッカーズやCCBのヘアスタイルに
憧れて、近所の床屋さんでカットして貰って
いたのだ
床屋のお兄ちゃんは矢沢永吉が好きな
リーゼントだったので、軟派な髪型を希望して
くる僕らを嘆いていたけれど、案外研究熱心
な人で毎回新しいアイドルっぽい
ヘアスタイルを身につけて僕らに
提供してくれていた


でも、今は髪型の話ししてる
場合じゃない


「あのさ、ここはマズいんじゃない?」

少し声を顰めてそう言うと

「どうして?」

なぜかカナコもヒソヒソ声になる

「だってさ、学校の側だし。体育の下崎とか
良く来るらしいよ」

「そうなんだ。ま、いいよ。
ね、文化祭の模擬店サンドイッチ喫茶にしない?」

「いいよって… サンドイッチ喫茶か」

良いアイデアでしょ!という顔でカナコは
僕を見ている

「でもさ、サンドイッチなんて頼んだら
高くつくだろ? どこのパン屋に頼むつもり
なんだ?」

「パン屋さんに頼んだりしないよ
私たちで作れば良いでしょ。だからさ
今日は試作の為の敵情偵察みたいなもの
なのよ」

カナコは決して素行の悪い方ではなく
逆に教師からの信頼も厚くて優等生の
部類に入るはずで、だから彼女がこんな風に
あっさりと羽目を外している現実に僕は
少なからず驚いていた


「カナコ大丈夫か? 無理してない?」


僕は心配になって聞いた

「だって、楽しいんだもん。私文化祭の
実行委員になって本当に良かった
レンくんとこうして色んな事経験出来て
毎日すっごく楽しいのよね」

それは良かった、けれど。




「美味いだろー、ここのサンドイッチ」

そう声がしたと同時に肩を叩かれ、その瞬間
ああやっぱり。と悪い予感ばかり的中する
自分の運命を呪った

振り返ると生徒指導の教師が立っている

「お前ら、つきあってるのか?」

「別に付き合ってません」

僕はこの教師が大嫌いだったのでそれだけ
ぶっきらぼうに答えて、それ以外は
口をきかなかった

「せっかく注文したんだし、ゆっくり
食べておいでよ、ハハハ
お前ら腹減ってたんだろー
それからな、あとでちょっと
生徒指導室に来いよ」

このちょっと生徒側にも立ってるフリ
して恩着せがましいところが大っ嫌いだ
ああ、イライラする

楽しい時をぶち壊しにされて
ムカムカしていたけれど、そんな顔すると
カナコに悪いかなぁと彼女を見たら
カナコは舌を出して変顔をしていたので
ちょっと安心したのを覚えている


茶店を出た後、二人ともしばらく神妙な
顔をして歩いていたのだけど、そのうち
どちらともなくプーっと吹き出してしまった

何がおかしいのか良くわからなかった
けれど、2人で顔を見合わせて、ゲラゲラと
笑いあった
教師の口調を真似して

「腹減ってたんだろー」
なんてやってると笑いが止まらなくなった
あんまり笑ったものだから最後は声も出せず
涙を流して笑い続けた

笑いのある時間を共有出来ることの
素敵さをこの頃はただ当たり前のこと
として捉えていたけれど、この瞬間は
本当に大切な時間だったんだな

なんの不安もなくただ笑い合える
それって、最高の幸せだ


つづく