眠れない夜の為に-チープな 午後3時-

初めての関東暮らし、町歩き、出逢いを記録しておきたい

僕と音楽と出来事と (5) 青いスタスィオン(7-4)

5.Never Say Good-Bye


カナコが僕の前から姿を消した



学校を辞めて引っ越しして
しまったからだ


訳が分からない
ここまで一緒に準備をしてきて
毎日ずっと顔を突き合わせていて
放課後も、休みの日も、この半年
ほとんど一緒に過ごしていて
音楽の話しもアイドルの話も山ほど
語ったというのに、肝心な事を
何も告げずに居なくなるなんて
いったい何を考えているんだ


結局、模擬店は僕らの集めていた中古レコードや
クラスのみんなの家から持ち寄った不用品。
商店街のお店に協力をお願いして
品物を出してもらいバザーのような
催しを行うことになっていた

「音楽かけてね、外国のバザールみたいな
雰囲気でやろうよ」

会場のレイアウトや飾り付けは僕の担当で
流す音楽はカナコが準備してくるはずだったのに





次第にわかって来たこと

僕は何も知らなかったけれど、
カナコの両親が離婚をしてカナコは
今の学校を続ける事が出来なくなった
あと半年だからと学校も説得をしたけれど
家計的にかなり厳しく、カナコ自身が
それを望まなかった
そして、母親の郷里で働きながら大検を受け
将来進学を目指したいと語ったのだそうだ

仲の良い女友達や他の文化祭の実行委員たちには
引っ越しする事は話していたらしく、と言うか
ほとんどの同級生は口伝てに
学校を辞める事を知っていたようだった

だからなおさら訳が分からなかった

僕が知らなかったハズは無いだろうと
みんな最初は本気にしなかった
でも、本当に知らなかったと分かると
腫れ物に触るような扱いになる
気の毒に…みたいな目をして


「俺はなんだったんだよ」



盛況のなか幕を下ろした文化祭のあと片付けを
しながら、ふと頭に浮かんだ言葉

(なんだったんだ、ってただの同級生だし)

それが正解だけれど、それでもスッキリしない
もやもやとした思いがあった




大量のゴミをグラウンドの真ん中に積み上げ
文化祭最後のイベントはファイヤーストーム
で終わりを告げる
チェッカーズや、杉山清貴&オメガトライブ
マドンナやワム、サザンやユーミン
様々な流行歌が流れ、歌ったり踊ったり
この日だけは教師もうるさく言わずに
黙って生徒の好きにさせてくれていた


真っ赤に照らされた皆んなの笑顔と
校舎の窓

本当なら、ここにカナコも居るはずなのに

ふと見上げた美術室のあたり


「せめて、ちゃんと言葉を交わしてから
見送りたかったな」

と思った


「…くん! ねえ聞こえてる?」

「え?」

振り返るとカナコと仲の良かった女の子が
近づいてきていた

「ごめんぼーっとしてた。なに?」

「あのさ、カナコから伝言あったの
忙しくて伝えられなくてこんな時間になっちゃって
ごめんなさい
借りてたレコード、美術室の右の棚に置いてます
ありがとうって伝えてねって言われてたの」


そう言えば、この前「安全地帯」のLPを
貸して欲しいと言われて貸したのだった
僕の足は知らず知らずのうちに灯りの消えた
校舎に向かっていた


つづく